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甲状腺の腫れ(健康診断で甲状腺に引っかかる)

健康診断で甲状腺が
腫れていると指摘された方へ

甲状腺イメージ健康診断や人間ドックでの視診や触診で甲状腺腫大(甲状腺の腫れ)を指摘されることがあります。日本では甲状腺疾患の罹患者が500~700万人いると推定されており、珍しい病気ではありません。

当院では視診や触診、問診を行って、甲状腺ホルモンの状態を把握する血液検査、甲状腺エコー(超音波)検査を行って甲状腺の状態を把握、評価します。甲状腺エコーでは、甲状腺の大きさ、たまった水や結節の有無や状態、血流などを詳細に確認しています。
結節はしこりですが、良性のケースが多くを占めており、甲状腺エコーの際に結節が良性か悪性かをある程度判断することができます。ただし、甲状腺の腫大に甲状腺がんが関与していない場合でも、甲状腺ホルモンの分泌に異常が起こる甲状腺疾患が疑われますので、血液検査で甲状腺ホルモンの状態を確認する必要があります。甲状腺疾患は、様々なつらい症状を起こす疾患ですが、適切な治療で治すことができます。甲状腺の腫れを指摘されたら、早めにご相談ください。

甲状腺とは

甲状腺はのどぼとけ(甲状軟骨)のすぐ下にある20g以下の小さい臓器で、羽を広げた蝶のような形をしています。甲状腺は、甲状腺ホルモンやカルシトニンなどのホルモンを分泌する働きを担っています。甲状腺ホルモンは食事で得たヨウ素を甲状腺が取り込んで作り、血液によって全身に運ばれて新陳代謝を促進し、脳の働きを維持する役割を担っています。また、胎児や子どもの脳や身体の発育や発達の促進も甲状腺ホルモンの重要な役割です。

甲状腺が腫れる原因

甲状腺の腫れは、全体が腫れるタイプと一部に結節(しこり)ができて腫れるタイプに分けられます。
結節は過形成と腫瘍があり、腫瘍には良性と悪性があります。ほとんどは良性で、甲状腺がんはまれです。また、甲状腺がんの多くは根治を期待できます。
甲状腺の腫れは甲状腺疾患で起こることもあります。甲状腺疾患には橋本病やバセドウ病などがあります。

甲状腺の腫れで現れる症状

甲状腺ホルモンの過剰や不足が起こっていると多岐にわたる症状が現れますが、ホルモンの分泌が正常で腫れも軽度の場合には自覚症状を全く起こさないこともあります。

甲状腺ホルモンが過剰な場合

動悸や息切れ、手の震え、暑がる、汗が増える、体重減少、食欲増進、軟便・下痢、むくみ、疲れやすさ、月経不順などがあり、イライラや落ち着かないなどの症状を起こすこともあります。脈が速くなって心臓に負担がかかり、脳梗塞の原因となる心房細動、心不全などの発症リスクがあります。また、骨粗鬆症にもなりやすくなるとされています。甲状腺ホルモンが過剰になるバセドウ病では、まぶたの腫れや目が出てくるといった症状を起こすこともあります。

甲状腺ホルモンが不足する場合

無気力、全身倦怠感、疲れやすさ、寒がる・冷え、肌の乾燥、過眠、便秘、体重増加、声がれ、むくみなどの症状を起こします。動作が緩慢になる、記憶力低下などの症状を起こすこともあります。

甲状腺の腫れによる症状

飲み込みにくさ、息苦しい・呼吸困難、咳、声がれ、いびきなどの症状があります。

甲状腺の腫れを伴う疾患

甲状腺の一部に腫れがある

  • 甲状腺腫瘍

甲状腺の全体に腫れがある

  • バセドウ病
  • 無痛性甲状腺炎
  • 妊娠初期一過性甲状腺機能亢進症(妊娠甲状腺中毒症)
  • 非自己免疫性甲状腺機能亢進症
  • TSH産生下垂体腫瘍
  • 橋本病(慢性甲状腺炎)
  • 腺腫様甲状腺腫
  • 単純性甲状腺腫
  • 甲状腺リンパ腫

甲状腺の腫れに痛みを伴う

  • 亜急性甲状腺炎
  • 急性化膿性甲状腺炎
  • 橋本病(慢性甲状腺炎)の急性増悪
  • 甲状腺嚢胞内出血

甲状腺が腫れている際に行う検査

超音波検査

超音波甲状腺の大きさや形状、たまった水や結節の有無や状態、血液循環の様子などをリアルタイムに観察できる画像検査です。

血液検査

血液を採取して血中の甲状腺ホルモンと甲状腺ホルモンを調節しているTSH受容体、甲状腺自己抗体を測定する検査です。また、甲状腺ホルモン濃度異常によって貧血や脂質、肝臓などに異常が起きていないかも確認します。
甲状腺腫瘍が疑われる場合にはサイログロブリンの測定を行う場合もあります。

甲状腺の治療

慢性甲状腺炎(橋本病)

橋本病は甲状腺に慢性の炎症を起こす病気で、甲状腺ホルモン値に問題がなければ症状を起こすことはありませんが、進行すると甲状腺機能低下症を起こし、様々な症状が現れます。甲状腺機能低下症は、不足したホルモンを補う薬物療法で症状は緩和・消失します。定期的に検査を受けて状態を確認しながら甲状腺ホルモンを補充する薬の内服を続ける必要はありますが、発症前と同じ日常生活を送ることができ、妊娠・出産・授乳なども問題なく行うことができます。

バセドウ病

甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺能亢進症の代表的な疾患です。抗甲状腺薬を使った治療を行いますが、抗甲状腺薬での治療が適さない場合にはアイソトープ治療(放射性ヨード内用療法)を検討します。また、腫瘍を合併している場合などでは、手術を検討することもあります。

甲状腺腫瘍(良性腫瘍・がん)

甲状腺腫瘍の中では腺腫様甲状腺腫(良性腫瘍)の頻度が高く、まれに甲状腺がんがあります。甲状腺がんは他のがんに比べると予後がよく、治せる可能性が高いとされています。がんの場合、基本的に手術を行います。
なお、バセドウ病や甲状腺腫瘍の治療には、アイソトープ治療や手術など内分泌内科・内分泌外科の専門医による検査や治療の検討が必要になりますので、当院では連携している高度医療機関をご紹介して患者様がスムーズに最適な医療を受けられるようにしています。