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腎臓で起こる貧血 (腎性貧血が続くとどうなる?)

腎性貧血について

腎臓腎臓機能が低下して生じる貧血です。腎臓は尿を作るだけでなく、様々なホルモンの産生や骨代謝などにも関わっています。腎臓が産生しているエリスロポエチン(EPO)は、赤血球の産生を促すホルモンです。腎機能低下によってエリスロポエチン(EPO)の分泌が低下すると赤血球が不足して貧血になります。

貧血の定義や基準値

貧血は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの濃度が低下して発症します。立ちくらみを「貧血になった」と表現するケースがありますが、貧血以外の原因で立ちくらみが起きている可能性があります。
貧血とされるのは、ヘモグロビン濃度で男性13g/dL未満、女性12g/dL未満、80歳以上では11g/dL未満となっております。

貧血で生じる主な症状

  • めまい・立ちくらみ・ふらつき
  • 食欲不振
  • だるさ・全身倦怠感
  • 動悸・息切れ・頻脈
  • 頭痛 など

貧血の原因

貧血を起こす原因は様々です。

鉄欠乏性貧血

最も一般的な原因で、ヘモグロビンの材料である鉄分が欠乏することで生じます。若い女性の発症頻度が多くなっています。また、男性や閉経後の女性に生じる鉄欠乏性貧血は、胃潰瘍や大腸疾患などで生じる消化管からの出血によって生じているケースがあります。鉄剤などを服用していないのに黒くて粘り気のあるタール便や血便が出た場合、消化管からの出血が強く疑われます。

葉酸やビタミンB12などの欠乏

過剰なアルコール摂取や過剰なダイエット、胃切除手術、萎縮性胃炎などで深刻な栄養不足になると、葉酸、ビタミンB12、銅、亜鉛などの欠乏によって貧血を起こすことがあります。

慢性疾患

腎性貧血(慢性腎臓病による貧血)に加え、関節リウマチをはじめとした膠原病、甲状腺機能異常など、慢性疾患の症状として生じる貧血です。

骨髄疾患

白血病・骨髄異形成症候群・再生不良性貧血・多発性骨髄腫など、血液を作る骨髄に異常を生じる疾患も貧血の症状を起こします。

その他

加齢によるテストステロン(男性ホルモン)減少、敗血症なども貧血の原因となります。また原因が特定できない場合もあります。

腎臓機能低下と貧血

腎機能低下によってエリスロポエチン(EPO)の分泌が低下すると赤血球が不足して腎性貧血になりますが、貧血の原因を鑑別するためには、他の原因によって貧血が起こっていないことを確認する除外診断が必要です。

腎機能低下に貧血症状が伴う場合、透析治療や腎移植に至る末期腎不全リスクが高くなるとされており、貧血の治療を受けて改善することで末期腎不全になるリスク低減が期待できます。

腎性貧血の治療

原因となっているエリスロポエチン(EPO)の不足を補充する治療を行います。注射と内服薬があります。

注射薬

ダルベポエチンαやミルセラなどのエリスロポエチン産生刺激製剤(ESA製剤)です。2~4週間に1回の頻度で医療機関を受診し、皮下注射します。透析治療を受ける前の保存期腎不全の治療に使われます。

内服薬(HIF-PH阻害薬)

内服薬エリスロポエチン(EPO)は、HIFという低酸素誘導因子によって産生が増加します。ただしHIFはたんぱく質のPHによって分解されてしまうため、PHの働きを阻害して分解をさせないことでエリスロポエチン(EPO)の産生増加が期待できます。
現在、日本では、エベレンゾ(ロキサデュスタット)、バフセオ(バダデュスタット)ダーブロック(ダプロデュスタット)、エナロイ(エナロデュスタット)、マスーレッド(モリデュスタット)という5種類のHIF-PH阻害薬が使用可能です

ESA製剤とHIF-PH阻害薬の違い

医療機関で受ける注射と自宅での内服という違い以外にも、現れる可能性のある副作用にも違いがあります。
注射薬のESA製剤では、まれに赤芽球癆を起こすことがあり、血栓塞栓症・高血圧などを起こす可能性もあります。
内服薬のHIF-PH阻害薬では、血栓塞栓症・高血圧、網膜出血、悪性腫瘍を起こす可能性があるとされています。ただし悪性腫瘍は臨床試験では確認されておらず、作用から理論的には可能性があるというものです。
なお、血栓塞栓症や高血圧はヘモグロビン濃度を厳格に管理することでリスクを低減できます。

また、内服薬であるHIF-PH阻害薬は、カルシウム・鉄・マグネシウム・アルミニウムなどを含んだ薬と一緒に服用すると十分な効果が得られないなどの可能性もあります。ただし、服用時間を空けることで十分な効果を得られるとされています。時間通りの薬の服用が難しい場合には注射治療をお勧めしています。

ESA製剤やHIF-PH阻害薬による腎性貧血の管理

日本腎臓学会診療ガイドラインでは、慢性腎臓病では比較的早期から腎臓によるエリスロポエチン産生の低下が起きていることから、定期検査で腎性貧血を早期発見することが必要であるとされています。
さらに腎性貧血のESA製剤による治療が多くの合併症予防や治療に有効とした上で早期の開始を推奨しています。

管理目標としては、保存期慢性腎臓病の腎性貧血目標Hb(ヘモグロビン)値11g/dL以上としており、投与の開始基準はHb値 11g/dL未満のタイミングとしています。
貧血を過剰に改善することによる弊害や生命予後悪化を防ぐためにはESA減量・休薬基準は13 g/dL超となっており、心血管合併症がある場合などでは12 g/dLを上限とするとしています。

気になる症状がありましたら新中野なべよこ内科までご相談ください

受付新中野なべよこ内科では、生活習慣病をはじめとした内科疾患の診療や循環器疾患、腎臓疾患の専門的な診療を行っております。腎性貧血のESA製剤やHIF-PH阻害薬を使用した治療にも対応しておりますので、安心してご相談いただけます。腎性貧血の疑いがある方、腎臓に心配がある方などご不安がある方はお気軽にご来院ください。