診療時間

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、就寝時に何度も呼吸が止まり、睡眠の質が著しく低下する疾患です。繰り返し呼吸が止まると体内の酸素不足によって深刻な合併症を起こす可能性があり、睡眠の質の低下によって日中の活動にも多大な支障を生じます。主な症状は、激しいいびきや喘ぎ、夜間頻尿、起床時の頭痛や全身倦怠感、日中の集中力・注意力低下などです。昼間、瞬間的に深く眠ってしまう症状が起こることも多く、ニュースに取り上げられるような大きな事故につながったケースもあります。
また、適切な治療を受けずに放置してしまうと、酸素不足によって血管や心臓に負担がかかり、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などの発症リスクが2~5倍になることが報告されています。
睡眠時無呼吸症候群は、7時間の睡眠中に、10秒以上の無呼吸状態が30回以上ある、または無呼吸や低呼吸が平均して1時間あたり5回以上ある場合に診断されます。
主な原因は、睡眠中に空気の通り道である上気道が塞がることで、睡眠時の喘ぐような苦しいいびきや無呼吸が生じます。いびきをご家族など身近な方に指摘されてはじめて気付くケースもあります。
女性より男性に多く、発症が増加しはじめる年代は、男性は40歳以上、女性は閉経後の50歳以上となっています。

睡眠時無呼吸症候群の
症状

睡眠中・起床時・日中で現れる症状は異なります。就寝時の症状はご自分では気付きにくいので、身近な方に聞いてみましょう。

就寝中

sasの症状1

  • いびき
  • 一時的に呼吸が止まる
  • いびきの次に呼吸が止まり、喘ぐような音をさせて呼吸が再開する
  • 夜中に何度も目が覚める・眠りが浅い
  • 何度もトイレで起きる
  • 息苦しさや呼吸の乱れを感じることがある
  • むせる・咳き込む

起床時

sasの症状

  • 寝起きに頭痛がある
  • 身体がだるい
  • 睡眠時間は十分なのに熟睡感がない
  • 喉の強い渇きを感じる・口内が乾いている

日中

sasの症状3

  • 全身倦怠感・身体が重い
  • 集中力・注意力の低下
  • 我慢できないほどの強い眠気がある
  • 眠気で一瞬意識が途切れることがある
  • 居眠り運転でヒヤッとしたことがある
  • 疲労が取れない

睡眠時無呼吸症候群の
発症リスク

いびきは狭くなった気道に空気が通る際に喉が振動して起こっています。無呼吸は気道が完全に塞がって一定時間呼吸が止まる状態です。
肥満すると首の周辺にも脂肪がついて上気道が狭くなります。仰向けで横になると喉の奥のあたりに垂れてきた組織が上気道を塞いで、無呼吸になります。睡眠時無呼吸症候群は、発症者の60%が肥満していると報告されており、肥満は睡眠時無呼吸症候群のリスク要因とされています。肥満の解消は睡眠時無呼吸症候群の症状改善に加え、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病の発症や進行の予防効果が期待でき、それによって動脈硬化の進行を防ぐためにも役立ちます。
また、扁桃や舌が大きい、顎が小さいと上気道が狭くなったり塞がったりしやすくなります。慢性鼻炎もリスク要因となります。

睡眠時無呼吸症候群の
診断・検査

セルフチェック

下記は、ご自分で日中の眠気の程度を確かめるためのセルフチェックです。
各質問に、0~3までの点数をつけ、その合計をもとに受診の必要性などを判断できます。

点数

0:眠くならない
1:時々、居眠りすることがある
2:よく居眠りしてしまう
3:ほとんどいつも居眠りしてしまう

状況 点数
座って読書している 0 1 2 3
テレビを見ている 0 1 2 3
公共の場所で静かに座っている
(映画館や図書館、会議中など)
0 1 2 3
1時間、他人が運転する車に乗っている 0 1 2 3
午後、横になって休んでいる 0 1 2 3
飲酒をしない昼食後、静かに座っている 0 1 2 3
運転中に渋滞で数分停車している 0 1 2 3
  • 0~5点未満:日中の眠気はほとんどないと考えられます。
  • 5~10点:日中に軽度の眠気が確認できる状態です。
  • 11点以上:日中に強い眠気があり、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。当院までご相談ください。

当院では、こうしたセルフチェックや問診の結果、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると判断された場合、ご自宅で可能な簡易睡眠時無呼吸検査を行った上で、診断しています。

簡易睡眠時無呼吸検査

簡易検査
簡易睡眠時無呼吸検査は検査機器を貸し出し、ご自宅でセンサーを装着して就寝していただきます。返却された機器のデータを解析し、診断します。機器の貸し出しと返却は郵送などを選択でき、検査機器の返却から1週間から10日程度で結果が出ます。
簡易睡眠時無呼吸検査は、ご自宅で腹部に名刺サイズの機器を装着し、指と鼻にセンサーをつけて、あとは普段通りに寝て頂くだけです。この検査では就寝時のいびき、無呼吸の回数や時間、お腹の向き(姿勢)を記録し、結果を解析して診断します。
検査データから得られた1時間あたりの無呼吸や低呼吸の合計回数となるAHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)の数値を元に診断されます。AHIでは、睡眠時無呼吸症候群の重症度を確認でき、それを元に経過観察、必要な治療、精密検査の必要有無などを判断できます。

AHI数値

~20 経過観察またはマウスピース治療を検討します
20~40 要精密検査、マウスピース治療またはCPAP治療を検討します
40以上 CPAP療法が必要な状態です
0~20(軽症)

日中の症状が気になる場合には、食事や運動などの生活習慣を見直し、横向きで寝るなど睡眠に関してのアドバイスを行いながら経過を観察します。慢性的な鼻炎や副鼻腔炎、慢性扁桃腺炎などがある場合には、耳鼻科や口腔外科などの専門診療科受診をお勧めしています。

20~40(中等症)

心電図や血管年齢などの精密検査を行って動脈硬化の進行状態を確認し、動脈硬化が疑われる場合には、ポリソムノグラフィー(PSG)という精密検査を行って確定診断します。

ポリソムノグラフィー(PSG)

ポリソムグラフィ
睡眠時の脳波、血液中の酸素量、心電図、空気の流れ、目・顎周辺の筋肉の動き、胸部・腹部の動きを調べる検査です。頭・顎・胸部・指にセンサーをつけて就寝します。以前は、1泊入院できる専門医療機関で受ける検査でしたが、現在はご自宅でこの検査を行えるようになっています。簡易検査と比べるとやや複雑ですが、サポート会社が電話で質問に答えるサービスがあります。
検査費用は保険適用され、3割負担で約12,000円が目安になります。なお、1泊入院で受ける場合には検査費用に入院費が必要となり約30,000円が目安となります。時間的・経済的にもご自宅で受ける方が負担を軽減でき、普段通りの睡眠による検査が可能です。
当院では行っておらず、検査が必要な場合は紹介が可能です。

睡眠時無呼吸症候群の
治療

CPAP療法

CPAP機械につながったマスクを装着して就寝する治療法です。圧力をかけた空気を送り込むことで気道を広げて無呼吸や低呼吸を防止します。副作用がなく、高い効果を得られることから先進国の睡眠時無呼吸症候群治療では最も多く行われています。治療を開始したその日から熟睡感を得られ、起床時の頭痛や倦怠感、日中の集中力・注意力低下や強い眠気といった症状も短期間で解消できます。ただし、あくまでも睡眠中に無呼吸や低呼吸を起こさないための治療法であり、根本的に睡眠時無呼吸症候群を解消するわけではなく、装着しないで眠った場合には再び無呼吸などの症状を起こします。
現在は機器がコンパクトになり、動作音も静かになっていますので、以前CPAP療法を受けていて中断してしまった方にもお勧めできます。

CPAP療法の適応条件

保険適用には、簡易睡眠時無呼吸検査のAHI数値が40以上、またはポリソムノグラフィー(PSG)検査数値が20以上という条件があります。
使用をはじめてしばらくは毎月通院していただきますが、状態が安定し装着が習慣化したら2か月ごとに通院していただきます。
引っ越しや勤務先が変わるなど、他院で受けていたCPAP療法を当院で受けたいとお考えの場合も気軽にお問い合わせください。使用されている機器を確認し、転院方法などについてお伝えしています。

マウスピース(口腔内装置)

顎が小さいなど、就寝時のマウスピース装着で効果が見込める場合に行われます。簡易検査でAHIが10~20の軽症という評価となった場合に検討します。睡眠時無呼吸症候群治療用のマウスピースを作ることができる歯科医院の受診が必要になります。

手術

扁桃のサイズ、鼻中隔弯曲症や副鼻腔炎などが原因となって睡眠時無呼吸症候群の症状を起こしている場合には、耳鼻科などの手術が必要なケースもあります。その場合には、連携している高度医療機関をご紹介しています。